【書評】カニはなぜ横歩きなのか [著]越前敏隆 これは嘘ニュースです
カニはなぜ横歩きなのか [著]越前敏隆
著者によると、カニの祖先にあたる甲殻類の化石調査から、カニはかつて前後左右に歩ける関節を備えていたが、進化の過程で横歩きしかできなくなっていったのだという。
横歩きしかできないカニは、一見生存競争で不利であるようにしか思えない。しかし著者は四方自由に歩くことができた祖先のうち、後ろから敵に追われて「バカ正直に」前に逃げた個体が捕食された結果、左右への移動能力に長けた個体が生き残り、前後への移動能力が退化していったと主張する。横に逃げるという選択を取った個体の方が高い知性を有しているのだ。
この仮説を証明する手段として、著者はサワガニに人工関節を取り付け、前後左右に動けるようにする「先祖返り」実験を行った。だがそれでも全てのカニが左右にしか歩かなかったという結果は衝撃的だ。この事実はカニが考える自由と我々が考える自由に大きな隔たりがあり、また「自由とは何か」という哲学的な問いも突き付けている。
カバー下にはサワガニのおいしい食べ方やサワガニじゃんけん必勝法について語ったおまけコラムが、また巻末にはサワガニペーパークラフトがそれぞれ付いており、文字を大きく改行を増やしてページ数を水増しすることも多い昨今の新書にしては珍しい旺盛なサービス精神にも好感が持てる。
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カモノハシ新書・756円