【書評】不確定密室殺人事件 [著]南部量子 これは嘘ニュースです
不確定密室殺人事件 [著]南部量子
外部から観測不可能な完全密室のため、誰も部屋の中に入ることができず、被害者がどうやって殺されたのか、被害者がどこの誰なのか、そしてそもそも目の前の鉛部屋に死体があるのかすら確定できない、犯罪史上類を見ない困難な殺人事件が大久保警部に降りかかる。
読者の読み方によって犯人が「AまたはB(単独犯)」、「AかつB(共犯)」、「AでもBでもない(犯人なし)」のいずれにも解釈できる叙述トリックと、圧倒的な描写力で第14回シュレディンガー賞を受賞。
室内の様子を確かめるため壁を壊そうとする大久保警部に「中を確認しなければ面倒な捜査をしなくて済むんですよ。帰りましょう」と囁く部下・斉藤の警察味あふれるセリフも素晴らしい。
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黒猫社文庫・864円