はんぺん漁、史上初「黒」が逆転 静岡・駿河湾 これは嘘ニュースです
静岡県産黒はんぺんの切り身
午前2時ごろから、それぞれ漁船に乗り込んだ漁師約80人が駿河湾に向けて出発。沖合に仕掛けた定置網を引き上げると、白黒のはんぺんが勢いよく網の上を跳ねながら次々と姿を現した。
例年は白はんぺんの半分程度しかとれない黒はんぺんだが、今年初めて黒の漁獲量が白を上回り、8倍近くに達した。網にかかったはんぺん群の色合いも限りなく黒に近い灰色で、「ここ数年黒はんぺんの割合が増えていると感じてはいたが、ここまで黒光りする網を見たのは初めて」と漁師も驚きを隠せない。1匹ずつの黒さも「かつてなく濃い」という。
白はんぺんと黒はんぺんは、本来同じハンペン科の魚で、稚はんぺんの体表は白色をしている。黒はんぺんは回遊中に太陽の光を多く浴び、体内のメラニン色素が増加したはんぺんで、今年の夏は連日晴天が続いたことから、黒の割合が多くなったとみられる。
食卓に並ぶことが多いのは、海底での生活時間が長い白はんぺんだが、光を浴びたはんぺんは体内にビタミンBなどを蓄積するため、実は黒はんぺんの方が栄養価が高い。黒はんぺんが地元の静岡県以外でなじみが薄い理由には諸説あるが、江戸時代、当時の駿河藩が黒はんぺんを門外不出とした名残りではないかと考えられている。最近では、静岡おでんの具やフライとして、わずかながら県外にも出荷されているという。
はんぺん漁を50年続けている漁師の武市半平さん(67)は「漁師の間では古くから『黒はんぺんが多くとれる年は災厄に見舞われる』と言われている」と話す。「何も起こらなければいいのですが」と語る武市さんの視線の先には、黒はんぺんの群れで海面が黒く染まる駿河湾があった。