ラノベ『俺の妹には友達が少ない』が出版中止 これは嘘ニュースです
出版業界中堅の青空出版社(板橋区)がライトノベル(ラノベ)を対象に募集した「星雲J新人賞」で、大賞を受賞した作品がコンピューターのプログラムによって自動で書かれたものであったことを、23日の授賞式で作者自らが暴露する出来事があった。これを受け、青空出版社はまもなく受賞取り消しと出版の中止を発表したが、昨今のラノベ事情を知る人々からは、起こるべくして起こったとの声もある。青空出版社は昨年、ライトノベル専門レーベル「星雲J文庫」の創刊を発表。同時に文庫に収録する作品を「星雲J新人賞」として募集した。長らく学術書専門の老舗(しにせ)として知られてきた同社だけに、新規分野開拓の試みとして業界で注目を浴びていた。
そして昨年11月、「第1回星雲J新人賞」として陸空海(りく・うつみ)さん(24)の『俺の妹には友達が少ない』が大賞を受賞した。
『俺の妹には友達が少ない』は、狐のような獣人で生徒会長の女子高生・春日ホロが、閉鎖された学園都市でさまざまな能力者と戦う物語。緊迫した戦闘描写や、寡黙で聡明、読書と美少女ゲームが趣味の黒猫少女などユニークな脇役が特徴で、審査員からは「どこかで見たようでどこにもない、ライトノベルの王道を行く正統派作品」と高い評価を受けた。
だが23日、都内のホテルで行われた授賞式のスピーチに立った陸さんは「この小説は昨今流行のライトノベル600冊をデータベース化したあと、それらしい単語を適当に組み合わせて作り上げた人工無脳的な文章。最後に多少の文法的手直しは行ったが、ストーリー設定から人物設定まで私は何も関わっていません」と暴露して退席。会場は一時騒然となった。
同日、青空出版社は自社のホームページで陸さんの受賞取り消しと出版中止を発表。6月に予定していた「星雲J文庫」創刊の無期延期を決定した。
ある関係者は「今回は作者自らが暴露したことで明るみになったが、実は同じようにして自動生成されたライトノベルが新刊全体の3割ほどを占めているのはラノベ業界では暗黙ながら周知の事実。表面的にはあくまで「ノベル」の体裁を取っているが、結局はさまざまな『萌え要素』の組み合わせとイラストレーターのネームバリューで売っているから、作家の文章力は割とどうでもいい」と話した。