Kyoko Shimbun 2009.03.09 News

5分で分かる現代ティッシュ事情 これは嘘ニュースです

 現代で「ちり紙」と言えば、それは半ば「つまらないもの」を意味する言葉だ。街を歩けば、ティッシュなどただで手に入れることもできる。しかし、今のような製紙技術ができるまで、ティッシュは高級品だった。今回は、まだティッシュが高価な品であった時代から今日まで続くティッシュペーパーの世界を覗いてみよう。

 ティッシュの歴史は、我々が思う以上に古く、文献上では今から約6000年以上昔のメソポタミア文明にまでさかのぼることができる。「ハンムラビ法典」が刻まれた石柱には「他人のティッシュを勝手に使った場合はその鼻をそぎ落とす」とあり、当時ティッシュが貴重な品だったことをうかがわせる。また、エジプトにあるピラミッドの壁画にパピルス紙で鼻をかんでいる人が描かれているのはあまりにも有名だ。

 中国の文献によると、日本にティッシュの製造法が伝えられたのはかなり遅く、弥生時代中期と言われている。現存する最古のティッシュは、福岡県・志賀島で出土した金印を包んでいた紙で、現代のティッシュよりかなり厚い。まだまだ製紙技術が発展途上であったことが分かる。

 その後平安時代になると、日本においてティッシュは「懐紙」として貴族に用いられた。その用途としては和歌を書いたり、口をぬぐったりするためのものとされているが、紀貫之の随筆によると「恥ずかしくて口には出せない」使い方もしていたという。また『源氏物語』の中でも、女官が源氏の寝室を通り過ぎる際、「(源氏が)あらぬ使い方をしていたので、見て見ぬふりをした」という記述もある。

 このように日本の文化においても、ティッシュの役割はさまざまであるが、そのティッシュを作る職人がいることを知る人は少ない。彼らは「塵紙職(じんししき)」と呼ばれ、古くから世襲でその技術が受け継がれてきた。現在の塵紙職は葛城弥(わたる)さん(81)。この職についてすでに60年が過ぎている。

 葛城さんは製紙業界で「ティッシュ・マイスター」との呼び声が高く、彼の作る究極のティッシュは現在の製紙技術でも機械的に再現することができない薄さと丈夫さを誇っている。葛城さんの作品を愛用する著名人も多く、最近ではジンバブエのムガベ大統領が合計1兆ジンバブエドル分ものティッシュを大量購入した報道も記憶に新しい。

 だが彼を語る上で、返す返すも残念なのは、2005年製作の「天の羽衣」事件である。「天の羽衣」と名づけられたこのティッシュは、200枚組にもかかわらず、厚さが1センチという「1000年に一度の傑作」と言われ、ニューヨーク市立博物館が20億円で落札したものの、展示会に出席したブッシュ前大統領が誤って鼻をかんでしまい、その価値が永遠に失われてしまった事件だ(現在は「ブッシュ前大統領がうっかり鼻をかんだティッシュ」として展示)。

 現在製紙業界はこの葛城さんの技術をオートメーション化するのにやっきだ。特にこれから花粉症のシーズンが本格的に訪れる。現在のティッシュ技術では鼻をかみ続けると、ティッシュとの摩擦で鼻の下が赤くなりやすい。何百回かんでも摩擦傷が出ない葛城さんのティッシュを再現できた企業は世界トップに立つ可能性が高いと言われている。

 ティッシュの世界は機械化の及ばない、まだまだ「紙」がかりの世界である。

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