Kyoko Shimbun 2025.07.19 News

「チート能力」に世論反発 キリ公国、転生者排除に政策転換 これは嘘ニュースです

キリ城
 キリ公国政府は18日、異世界転生者の受け入れを停止すると発表した。19日以降は転生即日に拘束、隣国へ追放する方針。現在国内に滞在している転生者についても順次国外退去を命じる。これまで積極的に転生者を受け入れてきた同国だが、世論の反発を受け、政策転換を余儀なくされた格好だ。

 キリ政府のアシドゥ報道官は18日の会見で、「従来の転生者保護政策を見直し、国民の雇用と文化を守る段階に移行する」と発表。19日以降、新規転生者は、転生者収容所に収監した上で、特別協定を結ぶ隣国に移送する。

 突然とも言える政府の方針転換の背景には、「転生者が自国民の雇用を奪っている」という民衆の不満の高まりがある。

 異世界からの転生者は2010年ごろから急増し、昨年は過去最多の7531人を記録した。転生者はなぜか前世の記憶を持った人が多く、彼らが考案した三圃式農業や、井戸の水をくみ上げる水車など、多くの発明は同国の発展を支えてきた。

 その一方、転生者が次々ともたらす技術革新によって雇用が失われる事態も相次いだ。肉を保存する冷却箱を転生者が発明した影響で、黒コショウの需要が激減。香辛料を専門に扱う行商人の多くが経営難から廃業に追い込まれた。また、転生者が持ち込んだ水力式洗濯機が普及した影響で、洗濯女ギルドも400年以上の伝統に終止符を打った。毎日20人以上のペースで転生者が持ち込む革新的技術に庶民の理解が追いつかず、日常生活に大きな混乱が生じつつある。

 4月には、首都キリ市のキリ城前で大規模な転生者排斥デモが発生。「チート能力で国をかき乱す転生者に頼りたくないので追い出すことにしました」「無双したいなら隣国でやってください」などの横断幕を掲げた10万人を超える群衆が城前広場に集まった。デモ隊は催眠呪文によって鎮圧されたが、閣僚の間からは「革命に発展する前に手を打つべきだ」とする声が高まっていた。

 このような世論に危機感を覚え、自主的に国を去る転生者も増加しており、その影響は日常生活にも広がりつつある。

 6年前に転生し、石けんを発明した転生者のヤマダさん(仮名)は今月、排斥デモに不安を覚えて隣国に移住した。ヤマダさんにしか作れない石けんの供給が止まった影響で、教会では日曜礼拝を屋外での開催に切り替えた。また、転生兵を積極採用していた軍も、転生者の一斉退職で弱体化。野生の翼竜駆除作戦では失敗が相次ぎ、過去に解雇した一般兵に復職を呼びかけている。

 転生者政策に詳しい国立キョトヮ大学高等研究院のスカモード・ギドゥユ教授は「今回の政策転換は転生者が持つ先端技術を隣国に流出させるだけでなく、将来的にはわが国が転生先として選ばれなくなる可能性さえある。転生者なしで今の生活水準を保つなど、どんなチートを使っても無理ゲーだ」と、警鐘を鳴らした。

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