アシモの「中の人」は語る 独占取材に成功 これは嘘ニュースです
ホンダ氏が入っていたとされるロボット「P2」
ホンダ氏が「中の人」として関わり始めたのは、1995年4月。アシモの前身である「P2」が公式発表される約1年前のことだ。当時求職中だったホンダ氏は、求人誌でたまたま見かけた「着ぐるみスタッフ募集」の広告に応募した。
「着ぐるみに興味はなかったんですけど、時給5千円という破格の給与に惹かれて、とりあえず応募してみたんです」
3度の面接試験に合格したホンダ氏は、そこで初めて自分がP2というロボットの中に入ることを知らされた。その後毎日2時間、ロボットのようなしぐさを演じる訓練を半年にわたって受けたという。
「ロボットと言っても、二足歩行のロボットだから少しは人間を感じさせるリアルな動きを求められるんです。機械であり人間でもあるという微妙なバランスをとるのが本当に難しかった」
翌96年12月、世界初の人間型ロボットP2が公開。完成記者会見の場がホンダ氏の初舞台だった。
「それはもう緊張しましたよ。失敗は許されませんでしたし。しかもまだ当時は『ひょっとして中に人が入ってるんじゃないか』といぶかしがる人も多かったのでプレッシャーがすごかったですね」
初舞台で成功を収めたホンダ氏は、その後さまざまな場でP2を演じてきた。97年、そんな彼のもとにアラブ首長国連邦(UAE)の王族からオファーが来た。
「とにかく珍しい物が好きな人らしく、レンタルで1日1億円出してもいいと言ってきたそうです。本物の二足歩行ロボットを開発するための研究費を稼ぐために、私ともども派遣されました」
ホンダ氏が入ったP2は早速宮殿内に招き入れられた。中では50人ほどの王族関係者が集い、珍しげに眺めたり、おそるおそる触ったりしたという。そこに主催者の王子が入って来て「アメリカから取り寄せたグリズリー(ヒグマの一種)と戦わせてみよう」と声をかけた。
「何を言ってるか全然分からなかったんですけど、目の前に3メートルくらいの大きなクマが出てきてこっちをにらんでるんです。生きた心地しないですよ」
檻から出てきたグリズリーはゆっくりとP2に向かい、ホンダ氏を羽交い絞めに。死を予感した彼が全てを打ち明け、ロボットから出て逃げようとしたその時だった。
「耳元でささやき声が聞こえたんですよ。『安心せえ、わしもバイトや』って」