「漫才毎日10時間、時給は200円」お笑い営業、進む留学生依存 これは嘘ニュースです
明細には2040円と書かれていた
「ソレ、タダノオッサンヤナイカ。エエワ、カワレ」「オイマテ、オマエモオナジオッサンヤナイカ」
大阪府枚方市内の家電量販店で行われた販売促進イベントで漫才を披露したのは、ベトナム人男性と中国人男性の留学生。この日初めて顔を合わせたばかりだ。2人は芸能事務所の担当者から開演3時間前に渡された台本を一生懸命に暗記して漫才に挑んだ。必ずしも流ちょうではないが、会場は時折笑いに包まれ、お客さんからの反応も上々であるようにみえた。
しかし、2人が日本にやってきた理由は漫才ではなく、日本語と機械工作技能の習得だ。
「生活費と授業料を払うためには漫才を続けるしかありません」と、ボケ担当のベトナム人留学生グエンさんは話す。この日は家電量販店、パチンコ店4件、居酒屋で計16回、朝から晩まで同じ漫才を披露した。労働時間は10時間。だが、マネジメント料ほか諸経費を引いたあと、2人の手元に残ったのは約2千円。時給換算で200円ほどにしかならなかった。
近年、安い賃金で雇えるとして、外国人留学生の労働力に依存する企業が増えている。これまでは縫製などの分野が主だったが、最近ではお笑いでも「家族が養えない」など生活苦を理由に若者から敬遠される傾向があり、その代わりに留学生が営業に出ることが増えているという。
外国人留学生の問題に詳しい留学生サポートセンターのソムチャイさんは「彼らはもともと日本の文化や日本語に興味を持っているので、『日本語で笑わせよう』という口説き文句にひかれて申し込むことが多い」と話す。だが実際には、現場で初めて会う相手とその日限りのコンビを組まされ、担当者から手渡された台本通りに漫才を演じることがほとんどだという。
「お笑い芸人という業種そのものが決して不人気というわけではなく、マネジメント会社が内容に見合う正当な賃金を支払っていないのが根本的な問題。中にはギャラの9割を持っていく会社もあるようです」と、ソムチャイさんは指摘する。
「お客さんが笑ってくれるのでやりがいはありますが、やりがいだけでは生きていけません。家族に仕送りもできません。ボケ担当なのにオチもなくてすいません」とグエンさんは話す。