躍進の決め手は「盟神探湯」 若手政治家続々輩出の政治塾 これは嘘ニュースです
熱湯に素手を入れる盟神探湯(くかたち)
政治塾「鳴程塾」を立ち上げたのは、吉田庵さん(44)。国会議員の秘書として10年近く政治の現場を間近で見た経験を活かし、2013年に開業。入塾者は現役の政治家や専門家を招いた講演会や、塾生同士の勉強会を通じて、政治のイロハを1年間学ぶ。
「政治や社会問題を学んで意識を高めていきさえすれば、必ず有権者に熱意が伝わると考えていました」と、吉田さんは振り返る。
だが、当選には「地盤(組織力)」「看板(名声)」「カバン(資金力)」が必要と言われる。「3バン」の後ろ盾を持たない若い新人が政治家になるハードルは高く、開業3年間で当選者はゼロ。落選した卒業生からは「理想だけで選挙は勝てない」「供託金泥棒」など、恨み節が寄せられるばかりだった。
「座学では得られない、何か決定的な資質が政治家にはあるのではないかと考えるようになりました」
当選するために必要な「何か」を求め、吉田さんは政治学だけでなく、社会学や統計学など古今東西の文献をあたった。そこでたどり着いたのは歴史書『日本書紀』だった。
『日本書紀』には允恭(いんぎょう)天皇の時代、臣下の者たちに、鍋に沸かした熱湯に入れた小石を素手でつかませる「盟神探湯(くかたち)」という儀式が行われたと記される。偽りを述べなかった者はやけどをせず、偽りを述べた者だけが大やけどを負ったという。「嘘発見機」のような役割を果たしていたようだ。
「古代の豪族は盟神探湯を通じて政治家としての資質を問われていたんです。政治家の適性を見極めるにはこれしかないと確信しました」
吉田さんは、5年前から政治家になれる見込みがある塾生だけを選抜する形式に変更。一般常識を問う筆記試験と面接試験の後に行う最終試験に盟神探湯を取り入れた。以前は志望者全員を受け入れていたが、合格率3割の狭き門になり、経営状況も悪化した。しかし「とにかく政界に若い人材を」という方針を貫いた。
「残念だったのは、盟神探湯で落第する若者が多かったこと。ある程度人生経験を積まないと政治家を務めるのは難しいと言うことかもしれません」と、吉田さんは分析する。
だがその落胆とは裏腹に、盟神探湯の導入以降、卒業生からは当選の報告が感謝の声とともに続々と舞い込むようになった。7月に行われた参院選では、ついに国政の場に塾生を送り出し、今では卒業生の3人に2人が現役政治家に。各地で活躍する元塾生の姿を見た若い世代から入塾の問い合わせも増えているという。
「鳴程塾出身者は一目見て分かりますよ。全員どちらかの手が真っ赤にただれてますからね」