残業ゼロ、会議短縮… 「ゼロトイレ」企業、業績拡大 これは嘘ニュースです
社内トイレには「終日使用禁止」の貼り紙が貼られる
若者の墓石離れによる需要の低迷から、長年経営不振にあえいでいた雪隠石材の雪隠鬼一郎社長(73)は、今年4月、社内に3カ所あるトイレを全て閉鎖し、勤務時間中のトイレ退席を禁じる訓示を発表した。社員の行動を分析したところ、トイレに費やす時間が一般企業に比べて2倍近く長いことがことが分かったためだ。
「日常の些細な怠惰が、会社全体の緩みを招いている」と考えた雪隠社長は、1990年代、学級崩壊を防ぐため、問題行動を起こす生徒に厳罰で臨む米国の「ゼロ・トレランス方式」になぞらえた「ゼロ・トイレット方式」を実行に移した。窓ガラスの小さなひびが全体の崩壊を招く「割れ窓理論」に対して、チャックの緩みを取り締まる「社会の割れ窓理論」と呼んでいる。
ゼロ・トイレット方式の発表後、すぐに社員から「どこのブラック企業だ」「オムツをはかせるつもりか」など猛反発の声が上がった。訓示後1カ月で半数近い社員が会社を去ったが、雪隠社長の決意は揺らがなかった。
会社に残った男性従業員は、方針の採用後、社内の雰囲気が「劇的に変わった」と話す。「定時で帰宅したい」という危機意識を社員全体が共有した結果、毎回1時間かかっていた会議が5分以内に収まるようになった。男性従業員は「上司の決断が速くなりました。みんながそわそわし始める夕方に近づくほど、稟議(りんぎ)が通りやすくなりますね」と話す。残業もなくなったという。
1日に行われた同社の4月~6月の業績発表によると、売上高、営業利益、純利益の全てで過去最高を記録。地銀関係者は「ゼロ・トイレットによって、無駄な人件費を抑えることにつながった結果、高収益体質に変化したのではないか」と分析する。トイレを我慢すると判断力が向上することは、オランダの大学の研究によって証明されていたが、改めて研究を裏付けたかたちだ。
業績改善を受け、同社では今後もゼロ・トイレット方式を続ける意向だ。社内には「社外秘は漏らすな」「滅私膀胱」などの啓発ポスターが掲げられ、一層の徹底が図られているという。
今月リニューアルした同社のホームページには「終日使用禁止」の貼り紙をしたトイレの写真や、「ご自由にどうぞ」と書かれた大量のお茶入りペットボトルが写った写真が並ぶ。「我慢しなければいけないのに、よく飲めますね」と男性従業員に尋ねたところ、「飲むのではなく、詰めるためのボトルです」と説明してくれた。