Kyoko Shimbun 2010.12.17 News

『KAGEROU』に深刻な脆弱性 アップデートを公開 これは嘘ニュースです

 15日発売された水島ヒロの小説『KAGEROU』について、内容に致命的な脆弱性があるとして、出版元のポプラ社は17日から更新プログラム(パッチ)を公開する。修正部分は600ヶ所以上。これを適用することで文学的に深みが増すという。

 15日に発売された『KAGEROU』には人物の心情表現など小説として破綻している部分が多く、発売後まもなくから「作品として成り立っていない」「読むに値しない」との苦情がネット書店「アマゾン・ドットコム」の書評欄などに殺到することになった。

 中には「小説界のファイナルファンタジー14」と賞賛する声もあるが、一方で「新古書店に売ってくる」「買ってすぐ売った」との声も多く、このままでは価格の暴落を招くおそれが高まったため、急遽更新プログラムを公開することになった。

 公開されるパッチは合計236ページ648ヶ所。また墨塗りで削除を求める部分も86ヶ所ある。パッチは公式サイトからダウンロードしたものを印刷してノリで貼り付けるか、書店で配布される修正シールを貼り付けるかして適用する。

 主な修正点は、表紙と奥付の「齋藤智裕」を真っ白なシールで削除。「水島ヒロの処女作」をなかったことにする。また裏表紙には「鍋敷き、マウスパッド、ヤギのえさ、紙飛行機、トイレットペーパーとして使わないでください」の注意書きを添えた。

 本文は会話部分の7割近くをおしゃれな会話に差し替え、B級コメディ臭を取り除いた。相次ぐ改行のため真っ白になっているページ下部には、作者のグラビア写真を挿入することで「全体的にスカスカしている」という批判に対処した。

 だが「イギリスならジンだな。イギリスジン、なんちゃって」「タバコを吸いません、すいません」「大喜びだワンワン、ワンダフルってな」など、最も苦情の多かったダジャレシーンは作者本人がなぜ苦情になっているのかまだ理解できていないため、今回の修正は見送られている。

 小説『KAGEROU』は1万部を売り上げるだけでも大変な昨今の出版業界において、異例の初版43万部を記録。また同日発売された弊社刊の『号外!!虚構新聞』は、文章量にして『KAGEROU』の3倍、価格は3分の1で対抗したが、見事に玉砕することになった。社主UK氏は「イケメンに生まれたかった」と愚痴をこぼす。

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<BOOK>KAGEROU

  第5回ポプラ社小説大賞受賞作。『KAGEROU』――儚く不確かなもの。廃墟と化したデパートの屋上遊園地のフェンス。「かげろう」のような己の人生を閉じようとする、絶望を抱えた男。そこに突如現れた不気味に冷笑する黒服の男。命の十字路で二人は、ある契約を交わす。肉体と魂を分かつものとは何か? 人を人たらしめているものは何か?深い苦悩を抱え、主人公は終末の場所へと向かう。そこで、彼は一つの儚き「命」と出逢い、かつて抱いたことのない愛することの切なさを知る。水嶋ヒロの処女作、哀切かつ峻烈な「命」の物語。

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