Kyoko Shimbun 2010.10.11 News

イワシ漁がいよいよピーク 新潟・親不知漁港 これは嘘ニュースです

漁を終え寄港する五十畑さんのイワシ漁船
 新潟県の親不知漁港では、イワシ漁が本格的なピークを迎えている。今年は秋の味覚・サンマが不漁の一方、イワシは例年以上の豊漁。しかし、中国産イワシとの競争では苦戦を強いられているという。

 「中国産は日本産の10分の1以下の値段で入ってくる。正直、国産イワシは相当厳しい」。新潟県・越後市場で、イワシの卸売りを担当する曽我さんは話す。中国産イワシの入荷量は約8万トン。また「日本産」と表記されるイワシでも、実際には中国から稚魚を輸入して日本で育てることで「国産」と称するイワシがほとんどだ。

 新潟沖で獲れた純日本産イワシの漁獲量は1トンにも満たない。記者は国産イワシを40年以上獲りつづけている五十畑さんら10人の漁師が乗る船に同行した。

 新潟沖約30キロの日本海。魚群探知機がとらえた影を頼りに、イワシの漁場に到着。五十畑さん達はさっそく背負った筒から矢を取り出し、弓をかまえた。水中に揺らめく小さなイワシに狙いを定めると、勢いよく矢を放つ。

 矢は海の中に吸い込まれるように入り込んでいくが、すばやく泳ぎ回る全長20センチほどのイワシに矢が刺さるのは五十畑さんでさえ至難の業だ。他の漁師も次々と海に向けて矢を放つ。1回あたり3時間、持ってきた矢がなくなるまでこの作業を繰り返す。

 漁船に積んできた矢がなくなった。この日の成果は15センチほどのイワシが4匹(200円相当)。1回の出漁ではこれくらいが平均的な数だという。

 漁港に戻った後、五十畑さんの話を聞いた。

 「この仕事を40年続けているが、イワシに矢が刺さるまで15年。身を傷つけないよう頭に矢を刺せるようになるには、さらに10年かかる」

 昨今急増する中国産イワシについてはこう話す。

 「中国がいったいどうやってあんなにたくさんのイワシを獲っているのか。向こうにはよほど弓の腕が立つ漁師がいるのだろうと考えた時期もあったが、そうではなく、たぶん中国が得意な『数の力』で漁獲量を補っているのだと最近は考えている」

 世の中には「網」という比較的便利な品があることを教えたほうがよいのか――。記者の胸をかすめたこの思いは、結局伝わることなく、新潟をあとにした。

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