Kyoko Shimbun 2022.07.08 News

「壁ドン」事案ゼロ目指す 隣室覗けるマンション 大阪・伊手前市 これは嘘ニュースです

マジックミラーでつながれば隣人愛が育まれるという
 夜中に大きな音や声を出してしまい、隣の部屋の住人から「ドン!」と壁を叩いて注意された――。マンション住まいなら少なからず経験する隣人との騒音トラブル。この問題を根本から解消する画期的な試みに取り組むマンションがある。

 大阪府伊手前市の5階建てマンション「メゾン・ド・ピサ」は昨年9月、老朽化と地盤沈下で傾いた建物を水平に戻す工事を行った。今年に入ってからは35戸全てのリノベーションにも着手。その際、隣室との間にある壁に150センチ四方のマジックミラーと呼ばれる特殊な鏡を2枚取り付けた。

 マジックミラーは、内側からはガラスのように外が透けて見えるが、外側からは普通の鏡のように反射する。隣室と共有する壁に裏表を変えた鏡を1枚ずつ設置することで、住人が相手の目を意識せずお互いの室内を観察し合える仕組みだ。

 「騒音トラブルが『壁ドン』から口論、訴訟へとエスカレートする原因は隣人に対する不信感。マジックミラー越しに隣人の人となりを可視化すれば、お互いに思いやりを抱けるようになる」

 リノベーションを担当した建築家の羽野小渾さんは、設計のコンセプトを「隣人愛育成マンション」と名付ける。

 築600年を超え、文化財にも指定されている同マンションは部屋と部屋を隔てる壁が薄く、長年住民間の騒音トラブルが絶えなかった。5階575号室の住人だった江戸時代の俳人・松尾芭蕉もその一人で、隣人の騒音に憤慨し「秋深き隣は何をする人ぞ」と詠んでいる。病床に伏し、壁を殴る体力も失せていた芭蕉は、無力感から来る怒りをこの句に委ね、翌月に亡くなった。騒音によるストレスが病状を悪化させたとする説が有力だ。

 「芭蕉の怒りは現代にも通じる普遍性を持っているが、壁にマジックミラーを設置して隣人の様子を把握していれば、こんな悲劇は起きなかった」と、羽野さんは指摘する。

 隣人愛を一層高めるため、羽野さんは最上階の5階フロアを、廊下と部屋の間の壁を取り払ったオープンスペース型として再設計した。監視カメラ50台と警備員6人を配備し、防犯対策にも力を入れる。改装工事は今秋に完了する予定。

 マンションの現場見学会に訪れた男性は、一通り内部を見終えると「新手の監獄かと思いました」と漏らした。

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<BOOK>隣人の愛を知れ

 『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』から7年ぶりの2作目。期待していなかった日常を変えた、出会いと別れの物語。
 人生でいちばん好きな人となら、幸せになれますか?不倫と仕事に一生懸命なパラリーガル、初恋の相手の同棲を続けるスタイリスト、夫の朝帰りに悩む結婚3年目の妻……。誰かを大切に想うほど淋しさが募る日常は、予想外の”事件”をきっかけに一変する。自分で選んだはずの関係に、どこで決着をつけるのか?
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