Kyoko Shimbun 2012.07.27 News

<プロジェクトX>大人気「冷やしウォシュレット」、その開発秘話 これは嘘ニュースです

冷水ウォシュレット「南極1号」
 日本発の技術として海外からも高く評価される温水洗浄便座「ウォシュレット」。だが、この猛暑で「温かい便座はちょっと…」と尻込みしてしまう人も多いだろう。そこで今注目を浴びているのが、冷水仕様の「冷やしウォシュレット」だ。今年6月の発表以来、世界中から問い合わせが相次いでいる、この夏場対策用便座を作り上げた一人の男がいた。

 「冷やしウォシュレット」を開発したのは、株式会社東京トイレット(TOTO)。一般の多機能トイレは年間通して便座や洗浄水に温水を利用しているが、夏場に入ると「尻がむれる」「温水が熱い」などの不満が多く寄せられていた。

 そこで同社の商品開発部では、昨年から「夏でも快適なトイレ」の開発に着手。第1回企画会議開始2分で挙がった「温水の代わりに冷水を使ってみてはどうか」という誰でも考え付きそうな提案をそのまま採用した。

 だが、机上のアイデアを現実のものにするのは簡単なことではない。開発当初、「使用者にとびきりの冷感体験を」と意気込み、温水を流す便座部分にマイナス196度の液体窒素を循環させてみたが、低温やけどではがれた尻の皮が便座に張り付くなど、開発室で悲鳴が響き渡らない日はなかったと言う。

 その後、ドライアイスなどさまざまな物質を循環させたが、結局、冷蔵庫で冷やした程度の冷水を使うのが最適との結論に落ち着いた。噴出液も同じ冷水を使うこととした。夏を目の前にした今年5月のことだった。

 「だが、何か足りない」

 開発歴1年、まだまだ尻が青いと言っても過言ではない伊藤藤吉郎さん(22)の直感がそう伝えた。そう訴える伊藤さんに対し、同僚の中には「尻に冷水を浴びせすぎて、尻がおかしくなった」と冷ややかに対応する者もいた。開発はほぼ終了し、プロジェクトは量産化に移りつつあるところだった。

 理解者のいない孤立した状況。伊藤さんは唯一の相談相手であるiPhoneアシスタントの「Siri」に語りかけた。Siriは「考えすぎですよ。尻だけでなく頭も冷やしてみてはどうですか」と答えた。たった一人の友人までもが彼を見放した。

 自宅に帰った伊藤さんはいつものように洗面所に行き、いつものように口をゆすいだ。その時、彼は気づいた。

 「リステリンだ…」

 急いでトイレに駆け込んだ伊藤さんは、まるで便器の妖精にでも取り付かれたかのように、氷で冷やしたリステリンを自らの尻に直接かけてみた。今まで味わったことのない清涼感。まさしくこれが彼の求めていた答えだった。

 翌朝、誰よりも早く開発室に着いた伊藤さんは、その後開発室に入ってきた同僚を見つけると、有無を言わさず羽交い絞めにした後、次々とズボンを引きずりおろし、その尻に冷やしたリステリンを見舞った。誰もが突然のことに驚くが、その意味が分かると、まさに「尻からウロコ」と言わんばかりの顔をした。

 伊藤さんの上司で研究開発部主任の丸輪太郎さん(51)は後にこう語る。

 「もう量産寸前だっただけに、上を説得するのは、そりゃ難儀でしたよ。何とか猶予としてもらった3日間、開発室ではみんな尻に火がついたみたいに仕事に打ち込みました。それでも時間が足りなくて『どうしてもあと1日だけ』と頼まれたときは、私、血の気が引いて尻面蒼白でしたよ。まあでもしかし部下の尻を叩くだけでなく、尻拭いをするのも私の仕事ですから。今となっては全て水に流すだけです」

 こうして完成した冷水ウォシュレット「南極1号」は今日も暑さにうだる日本人の尻に一陣の涼風を送り続けている。

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