Kyoko Shimbun 2009.01.15 News

ちりも積もれば・・・ 1円が5千万円に これは嘘ニュースです

 全国の人々から1人1円ずつもらえば1億円になる――。子供の頃にそんなことを夢見た人もいるかもしれない。そしてこの夢が現実になろうとしている。

 伊吹次郎さん(52歳・仮名)の一日はノートパソコンのスイッチを入れることから始まる。起床は朝6時。寝袋は特注のものだが、今の時期、野宿をする者にとってはかなり厳しい寒さだ。こごえる指でキーボードを打ちながら、収入を記録する。昨日の収入は4378円。ここ数ヶ月は不況の影響か少し収入が減っていると言う。

 伊吹さんは全国一軒一軒を回りながら、1人1円の寄付を呼びかけている。朝8時から住宅回りを開始。そのまま夜8時まで12時間ほとんど休みなしだ。平均の日収は5000円前後。つまり毎日5000人分の1円玉を集め続けていることになる。寄付された1円玉の重さは毎日5キロに上る。千円札なら5枚分。だがこの重さこそが今の仕事のやりがいにつながっている。

 思いついたのは23歳の頃。ある日「全国の人々から1人1円ずつもらえば1億円になる」ということに気がついた伊吹さんは、その翌日地元の滋賀県から巡回を開始。最初の1週間で2万円の収入になった。病みつきになった。

 この活動を始めてもう30年になる。最初の頃は不審がられてお金をもらえないことも多かった。1円の寄付さえ断る家もあり、土下座は日常茶飯事だった。だが、テレビなどで取り上げられてからは活動に理解を示す人が増えた。中には100円の寄付を申し出る人もいたが、そんなときでも律儀に99円のお釣りを支払った。

 伊吹さんの通帳を見せてもらった。人々から集めたお金はこの30年で5千万円を超えていた。伊吹さんは「これが5千万人の人々の善意なんです」と語る。しかし一方で「まだお金をもらっていない人が7千万人もいる。彼らは僕に対して敵意を持っている。殺されたくない」と被害妄想が膨張している一面もある。

 最近「全国の人々から1人100円ずつもらえば100億円になる」という同業者が現れた。また、インターネット上でもオンラインで1人1円の寄付を訴えるサイトが現れた。伊吹さんは「汗をかかない活動では誰も信用してくれない」と強く主張する一方で「せめて1人10円にしとけばよかった」「活動を始めた頃にインターネットがあれば……」と弱気に悔やみもする。

 夢は集めた1億枚の1円玉を溶かして「1億円玉」を作ることだ。貨幣を破壊すれば貨幣損傷等取締法違反で1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられるが、30年の重みの前に記者は口をつぐむしかなかった。

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